2018年04月28日

Retrospective fabrication

ある晴れた日の森の中から始まる物語。

人間が騎士を目指すための修行場となっている町、シルバーナイトタウン。
そこから少し外れた森の中に、小さな泉がある。
アインハザードの神像が立つそこは、ロウフルテンプルと呼ばれている。資格を持つ者が神聖な魔法を契約するための神域である。

泉の中央に立っているのは、女性のエルフだった。
一糸纏わぬ姿ですらりとした体型が艶かしく、しかし右手に持つ剣が彼女を異質と認識させてもいた。
もちろん水浴に来ただけではないだろう、表情からは沈痛な何かを感じられる。

刀身に映る自分の姿を見て、彼女はひとつ、ため息をついた。


守りたいものを守る為の力を、なぜあたしは手に入れることができないのだろう。


それはエルフだから?
それとも女だから?
ああ、すぐ近くに居る人間たちはみな騎士に憧れて努力の末に騎士になっていくというのに。
なぜ、あたしはあの強さにたどり着かないのだろう。

苛立ちに右手に力がこもり、その手を…


ばっしゃーん!!

「!?」
突然背後で鳴る水しぶきの音に、彼女はハッとする。
意識が自分に向きすぎていて、接近に気付かなかった。防具どころか服すら無い今、襲われては無事では済まされない。剣ひとつが頼みだ。
彼女は向き直る。足を水とられ動きが鈍い。直感的にまずいと感じた瞬間、先手必勝とばかり右足を蹴り上げ跳躍する。
「はあっ!」
標的を目に捉え、素早く右腕の剣を高く振り上げる。そして、

ばっしゃーん!!

彼女はそのままの恰好で水面に突っ伏した。


「あのー、大丈夫ですか?」
「う、うむ…」
あたしに近づいてきていたのは、人間の女性だった。…いや、女性というより少女といったほうが正しい。
歳のころでいくと14,5歳といったところか。顔も体つきもまだ未成熟さを露わにしている。
…しかし、成り行きとはいえエルフと人間が並んで身体を清めているとかそうある光景ではない。
「あんたは、町の住人か?」
「はい、そんなところです」
「そんなところ…?」
訳アリなのだろう、それ以上聞くのをやめた。…が、話しをやめた理由はそれだけではなかった。
ばしゃり、と水音をたてて立ち上がる。

「いたぞ!!」

全身を黒い鎧で固めたのが3人。
明らかにあの町の者ではない。ブラックナイト…反逆王ケン=ラウヘルに仕える騎士たちだ。
「我が国王に反する者め!死ね!」
問答無用、黒い鎧は剣を抜き、人間の少女めがけて泉へ入ってくる。
しかし、泉へ入るということは足が鈍るということだ。その隙をあたしは見逃さない。

一瞬で黒い騎士たちの首と胴体が離れる。それらは血しぶきと共に泉へ落ち、そして泉の力で『蒸発』した。
剣を自在に波打たせての三連撃、しかもそのひと振りごとに人の首を兜ごと刎ねるだけの威力がある。エルフの華奢な体躯からは想像できないが、これは身体のバネを最大限に使って引き出す膂力によるものである。
「強い、んですね」
少女の言葉に振り向き、驚く。彼女は怯えているとばかり思っていたが、そこには優しくも儚い、慈愛に満ちた表情があった。
「強い、けどなぜか悲しい強さです」
「変なことを言うな。悲しい強さとは何か」
「見てると私が泣きたくなるからです」
「なぜだ」
「感じられるんです」
「…そっか」
それ以上の言葉は要らなかった。この少女にはあたしの『何か』が見えているのかもしれない。
しかし、まだ子供だと言ってもおかしくない彼女にあたしの何を悟られているのだろう、何より彼女はあたしの剣を見てそう言ったことに…

「私と、一緒に来てくれませんか?」

そう、あたしは彼女に惹かれたんだ。
守るものの為の剣、それを一度は振るうたが今あらためて思う。
…この剣、彼女のために捧げてもいい。
あたしの騎士道は、きっと彼女との縁にも繋がっている。

剣を置き、ひざまずく。


この、あどけなくも凛々しい不思議な少女が、15年後、バナナ好きINTゴリラ姫としてアデンにその名を轟かせることとなる。
posted by Selkie at 11:47| 神奈川 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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